小金井市医師会からのメッセージ(新型コロナワクチンについて その4 mRNAワクチンって何?)

更新日:2021年3月30日

一般社団法人 小金井市医師会

新型コロナワクチンについて その4 mRNAワクチンって何?

現在日本で接種がはじまっている新型コロナワクチンはファイザー・ビオンテック社のmRNA(メッセンジャーアールエヌエー)ワクチンです。mRNAは昔生物の授業で聞いた!という方もいらっしゃれば、忘れた、何それ?という方もいらっしゃると思います。今回はmRNAワクチンを含め、ワクチンについて解説していきます。

1.ワクチンとは

 そもそもワクチンとはなんでしょうか?

ワクチンは、体に細菌やウイルスなどの病原体が入ってきた際に、事前に免疫をつけておくことで感染や病気の発症、重症化を予防するお薬です。病原体に感染すると、免疫細胞はその一部を認識して反応し、それに対する免疫ができます。そして免疫細胞は一度入ってきた病原体をずっと記憶していて、次に同じものが入ってきたときに素早く攻撃できる仕組みになっています。

ワクチンを打つと、実際に病原体に感染しなくても免疫をつけることができます。新型コロナウイルスもそうですが、感染すると命にかかわったり後遺症が残る病原体もあります。そういった危険な病原体に対してワクチン開発が行われています。

2.mRNAワクチンとは

ワクチンにはいくつか種類があります。これまで使われてきたのは生ワクチン(病原性を弱めた病原体)、不活化ワクチン(感染力をなくした病原体)、組換えタンパクワクチン(病原体を構成するタンパク質)です。mRNAはタンパク質の設計図で、mRNAワクチンは病原体を構成するタンパク質の設計図を投与することで免疫をつけるという新しい種類のワクチンです。(図1)

生ワクチン以外は原理的にウイルスそのものに感染することはない
図1


図2

私たちの体の中では、日々細胞内で様々なタンパク質が作られています。その仕組みを簡単に説明すると次のようになります。

(1)細胞の核にあるDNAから、作りたいタンパク質の情報が記載されている部分をmRNAに設計図としてうつしとる。

(2)mRNAは核の外の細胞質でリボソームというタンパク質合成マシーンに読み取られてタンパク質ができる。(図2)


図3

新型コロナウイルスの場合、ウイルスのまわりのスパイクタンパク質(Sタンパク)というトゲトゲの部分への免疫をつけたいので、この部分の設計図が書かれたmRNAワクチンを作ります(図3)。Sタンパクの部分の設計図だけなので、ウイルスの遺伝子本体は入っていません。ですからワクチンを打つことで新型コロナウイルスに感染することはありません。また、mRNAは核の中に入り ませんので、ヒトの遺伝子に組み込まれることもありません

mRNAは細胞に取り込まれてから20秒から20分で分解されます。作られたタンパク質も10日以内には分解されいずれも体内に残りません。このような理由から、mRNAワクチンの長期的な副作用は考えにくく、たとえあったとしても非常に稀と考えられています。さらに、mRNAワクチンは効率よく免疫をつけることができるので、アジュバント(免疫をつけるのを助ける補助剤)が入っていません。水銀などの保存剤も入っていません。成分はmRNAと、mRNAをくるむ膜になる脂質と、塩類、糖類のみでいずれもこれまで人に投与されていて安全性が確認されています。

これまでの組換えタンパクワクチンは、標的となるタンパク質を工場で作っていました。図3のSタンパクを見ていただくとわかるとおり、タンパク質は複雑な3次元構造をしていて作るのが大変です。mRNAワクチンは、設計図を投与すればこの複雑なタンパク質合成を自分の細胞がしてくれます。人間の体ってすごいですね!設計図を作ること自体はそれほど難しくはないので、たとえば変異ウイルスが出たら、それに合わせて設計図を書き換えればすぐに対応することができます。

出典
図1:「こびナビ」HPより
図2:峰宗太郎先生「新型コロナウイルスワクチンの基礎と原理」2021年3月3日新潟県医師会勉強会スライドより
図3:峰宗太郎先生「新型コロナウイルスワクチンの基礎と原理」2021年3月3日新潟県医師会勉強会スライドを改変

3.最後に

mRNAワクチンは新しい技術ですが、突然ふってわいたものではありません。mRNAワクチンの基礎研究は20年以上行われてきており下積みがありました。技術の進歩により新型コロナウイルスの遺伝子配列を迅速に解析することができました。重症急性呼吸器症候群(SARS)の際の研究も役立ちました。100年に一度のパンデミックの中で、世界の超大国がお金と人を全力投球した結果、これまでにないスピードで開発し安全性や有効性を確認することができました。(安全性・有効性については「新型コロナワクチンについて その1 効果と安全性」をご参照ください。) 第4波が危惧される中で、ワクチンは唯一の武器であり希望です。長いコロナ禍に終止符を打つために、ワクチンについての理解を深め、接種をご検討いただければと思います。ご心配なことがございましたら是非かかりつけ医にお尋ねください。

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